6/22/2011

(インタビュー訳)ドミニク・ロメオ(Domenic Romeo)氏 ―A389レコードオーナー、ヘヴィミュージックシーンと、今なお生き残るアナログレコードについて語る

http://citypaper.com/music/domenic-romeo-1.1091844
より。
ボルティモア・シティー・ペーパー

ドミニク・ロメオ(Domenic Romeo)氏
―A389レコードオーナー、ヘヴィミュージックシーンと、今なお生き残るアナログレコードについて語る


2011年1月19日

A389という、たぶん今のボルティモアで最も活発なレコードレーベルがある。今週末(2011年1月22日)には、その強力すぎて耳を引きちぎってくれる7周年記念ライブがSonarにおいて行われる。ゴリゴリのNYスタイルのハードコアから、ボルティモアが誇るドッロドロのスラッジな音を出すOAKまで、レーベルがこれまでリリースしたタイトルも錚々たるメンツで、うるさい音楽をバッチリ幅広く押さえてある。ただ、これまたこのボルティモアの音楽シーンのように、そこにはまだまだ知られていない部分、謎のベールに覆われているところも多いといえよう。そこで我らがCity Paperは先週、レーベルの設立者でありオーナー、そしてさらに同時にハードコアバンドPULLING TEETHのギタリストとしても活動しているドミニク・ロメオ氏に、仕事の合間を縫って電話インタビューを敢行した。ヘヴィ・ミュージックシーンのサポートや、不動産物件差し押さえ業時代、そしてなぜ未だにメタルヘッズとパンクスはレコードを買い続けるのか、直撃した。


City Paper: えっと、A389のきっかけについて教えてください。どうして自身のレーベルを始めようと思ったのですか? 

Domenic Romeo: 僕がカナダに住んでいたとき(*)、そこでも自分のレーベルを運営していたんだ。今よりもずっと小さいんだけど。13th Day Recordsって名前で。『13日の金曜日』シリーズが大好きだったからなんだけど。(バンドを)始めてからずっと、自分のバンドの音源を自分で出してきたんだ。自分のバンドと友だちのバンドはほとんど出してきたかな。たしか全部で5枚くらいだよ。

それから2003年の終わりか2004年に、SLUMLORDSを始めたんだよね。メチャ精力的に活動して、ライブをかなりやった。そのときかなあ、他のバンドを援助する手段として(レーベルを始めようと)考えたのは。最初のリリースは、BRING IT ONというボルティモアのバンドで、かなりNYハードコア的な音を出すバンドだった。当時考えてたのは、「もし自分のバンドがうまくいってるんだったら、どうしてそれを他のバンドを援助していくことに利用しないんだい?」ってことだった。種を蒔いて、それが育ってくるのを見る。でしょ?

(*)ドムはアメリカ在住のカナダ人です。


CP
:
たとえば、ビジネスにしたり、それが職業になったり、有名になること、ってことがレーベルの目標だったことって、ありますか?

DR
: えーと、たしか5枚目に出したのがこのHOLY GHOSTというバンドで、これがうちで最初のLPだった。最初はDeathwish RecordsからこれのCDが出る、って話を聞いて、それでこのアナログをうちで作らせてもらえないか、ってお願いしたんだけど。このバンドは本当にカッコよくて、それに彼らにはこれまでずっと助けてもらってたんだ。そのときからかな、いろんなバンドと、何年もツアーを次々に回れるようになれて。本当にいいネットワークを持てたと思う。その時々で、いろんなバンドにレコード出す?って聞いて、バンドもたいていOKしてくれた、ってくらいのことだよ。うちは今でだいたい60作品くらい、今年でさらに10作品くらい出す予定だけど、初期のものも最近のものも、うちから出てるのはどれもそういう感じだよ。

時間的な問題で言うと、今はホントにフルタイムの仕事を二つしているような状態なんだけど(PULLING TEETHとしての活動とレーベルの運営)、最近はレーベルの仕事の量がバンド以上になってて、家にいてそっちの方に時間を割かないといけなくて。ちょっとこんなになるとは思ってなかったんだけど。なんていうかな、「レーベル買い」してくれてるような状態で。僕も一キッズだった頃、例えばBLOODLET(*)やINTEGRITYがVictory Recordsのバンドだから、って理由でVictoryのバンドをチェックしてたし。DEADGUYはそうやって見つけたし。同じことが(自分のレーベルであるA389でも)起きてるっていう。それってなんか、ヤバいじゃん。

それで一番嬉しいのが、僕が辿ってきたのと同じような道をキッズたちが歩んでるところを見れる、ってことかなあ。あるバンドをうちのレーベルで見つけて、それをきっかけにうちから出してる他のいろんなバンドも知りたくなっちゃう、ていう。で、こうして広まっていく、っていうか。そのキッズたちもバンドを始めて、シーンに入ってきて、あっという間に、雪だるま式に大きくなるでしょ。

(*)原文にはBloodWHATとありますが、BLOOD FOR BLOODの聞き間違いだと思います
本人に確認したところ、BLOODLETでした。訂正します。(2011/07/01)


CP: そちらのレーベルでは、一メタルレーベルとして、違法ダウンロードに屈しないよう、うまくやっていけていますか? 

DR: たしかに、違法ダウンロードはさまざまな音楽レーベルの売上に打撃を与えてるけど、こっちは他のジャンルほどじゃないよ。ファンたちは、自分たちの好きなバンドをサポートする、ってことに関しては結構気合入ってると思う。実際ハードコアとハードコアパンクでは、その点に関して他のどれよりも違ってる。それは本物なんだ。例えば、あるバンドのライブに行って、そのバンドに駆け寄っていったとしよう。そうすると、彼らは実際に話しかけてくれると思う。バンドは、望めば自分から関わっていける人たちなんだ。一方的に詰め込まれる何か、ってものじゃないんだよ。 


CP: では、うるさい音楽に興味がない、っていう人に対しては、どうやってその世界に引きこむのがいいと思いますか? 

DR: Celebrated SummerとSound Gardenっていういいお店がココにはあるんだよ。昔はエラそうなお店もあって、なんていうかな、素人だと入りにくくて、なんかビビらせてくるようなあの感じ、ツアーだとそういうお店も見かけるけど、Tony (Pence / Celebrated Summer)や、Sound Gardenの子たちはみんな本当にきちんといい仕事をするし、ウェルカムな雰囲気にさせてくれるし、いろいろ教えてくれるし、レコードをかけてくれるし、音楽の話に乗ってくれる。とてもいいところだよ。ボルティモアはシーンにとって本当にフレンドリーな場所だよ。 


CP: A389、ってどういう意味なんですか?

DR: 話はSLUMLORDSを始めたときにさかのぼるんだけど。メンバーうちの多くが、ある不動産物件差し押さえ会社で働いてたんだよ。A389、っていうのはその時、誰かをそいつの家から強制退去にさせるときに使ってた鍵の種類の名前で。ただの南京錠だよ。型番A389の南京錠。 


CP: マジですか、では、そのヤバそうな仕事の話の続きをお願いします。

DR: そんな期待してもあれだよ。ほとんど空き家ばっかりだったから。実際数年間は特にトラブルもなく仕事できてたからね。教科書的な辛い(立退きの)話なんてよく聞くけど、2~3年働いて、嫌な気分になったことなんて実際一回だけだからね。ある年配の女性と、その子どもの家庭なんだけど。その子どもがヤク中でお金のことしか頭になくて、って話で。その時はムカついたなー。あ、立ち退きさせてる人たちにじゃないよ、そのガキにムカついた。でも、仕事のほとんどは、立ち退きになるまで家賃を払わない人たちだから。そういう場合当人は必要な物と一緒にどっかいなくなってて、ゴミだけ残されてるから、それを運び出すために雇われてる、っていう。基本的に日雇いで、もう持ち主の消えた荷物を運び出すっていう。 


CP: A389をやっていて、グッときたのはどんな時でしたか?

DR: あー、それはPULLING TEETHのParanoid Delusions (Paradise Illusions)のホログラム(*)になってるジャケットを作った時かな。まだ誰もやってなかったと思う。CDでは見たことあったけど(LPではなかった)。全面じゃなかったし。アレは狂ってたな~。具体的な制作費は言わないけどさ、相当かかったし。売れなかったらどうしよう、そうなったらレーベルも辞めてあと数年は制作費のためだけに工場勤務だな…とかマジで考えながらウェブサイトに載せてたことを思い出すなあ。

まあ、そういうのもあるけど、この、INTEGRITYやRINGWORMみたいな全部好きなバンドばっかりの今回の出演表が手元にあることとか、新しいバンドがデモを送ってくれることとか、どれも素晴らしいことだと思う。まだまだ生き残ってる、そしていいバンドがたくさんいる、ってことを見て確かめことができること。それに本当にヤバイな、って思うのが、例えばあるバンドが僕にデモを送ってくれて、それがイイ感じで、その返信をする、と―返信はいつもするんだけど、いつもしっかり聴いて、こんな感じでなんかコメントを返して。「とてもカッコイイね!でもスマン、今は忙しすぎて次の作品の面倒を見る余裕がないんだ、けどこの勢いでどんどん続けて、また新しいのを聴かせてね」みたいな感じで。そしたら一年後、彼らが僕に今度はレコードを送ってくるんだけど、それが脳天直撃のシロモノで、次の作品をリリースしたくてしたくてたまんなくなっちゃって、こっちから是非やらせてくれ、って感じになって。こういうことが起こる瞬間に実際立ち会ってきたから。バンドを辞めずに続けて、よくなっていって、そしてトンデモないバケモノに変わっていく、その瞬間に立ち会っちゃうと、これはもう、マジで幸せにならざるをえないでしょ。

(*)…レンチキュラー印刷で、角度によって絵が変わる狂ったジャケットでした。



以上です。


△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲
おまけ
以下そのホログラムのジャケットです。


角度を変えると絵が変わる、アレです。
表面がプラスチックでギザギザしてるっていう。

狂ってます!レコード本体も深緑のスプラッターで気合入りまくりです。
速くてメタリックな曲から、サバス系のダークでヘヴィで長尺な曲まで、
収録曲数は以前よりだいぶ少なくなってますが、バラエティに富んでいます。
いろいろなジャンルを横断して聴いてほしい作品です。

0 件のコメント: