7/01/2011

(インタビュー訳)インタビュー:ドミニク・ロメオ(Domenic Romeo; A389/PULLING TEETH)

WORDS OF EVILより。
Interview: Domenic Romeo (A389/PULLING TEETH)の翻訳です。

インタビュー:ドミニク・ロメオ
(Domenic Romeo; A389/PULLING TEETH)



はじめに、読者の方にあなたがいったい何者なのか、簡単な自己紹介をお願いします。

名前はドミニク、うちの身内やA389 Recordings、いろんなバンドやレコーディングプロジェクト、今は特にPULLING TEETHとHATEWAVESかな、この周辺で広くうすーく知られてるね。



ハードコア/パンクはどんなきっかけで聴くようになったのですか?また、人生で最初のライブは何ですか?

最初に観たライブはIRON MAIDENとANTHRAXで1990年ごろ、学校の第7学年(*)のときだったよ。そのころはThe Power Hourでビデオに出てたSUICIDAL TENDENCIESやD.R.Iとかのクロスオーバーバンドにハマってた。でも、1995年頃に初めてMADBALLのライブを観るときまで、ホントのハードコアのライブ、っていうのには行かなかった。そのときのMADBALLは"Set It Off"期で、Matt Hendersonがまだバンドにいて。そのときの強烈な印象が今でも残ってる。

(*)日本で言うと中学1年生にあたります。



一リスナー/一ファンとして、あなたはどうしてそんなにダーク・ハードコア(INTEGRITYやLEFT FOR DEAD等)に心掴まれているんだと思いますか?

たぶん、僕がもともとメタルヘッズとして育ってきて、それでホラー映画マニアだったってことが、こういったダークなモノにいつでもハマってしまう素養だっ たんじゃないかなとは思う。LEFT FOR DEADはダーク・ハードコアとは言わないけど、彼らは怒りを音楽を通して噴出させるバンドとしてはまさにコレ、といったバンドで、その点では自分の中ではナンバー1だよ。彼らみたいなバンド、たとえばHAYMAKERやDESPISE YOU、GEHENNAはみんな、曲を聴くと血液が沸騰するんだよね。それこそ、最近の多くのバンドの中で欠けている感覚だと思う。中にはLOW PLACESみたいな、今でもそういうバンドはいくつかいるんだけど。彼らの12インチを聴いたとき、デカい拳がスピーカーから出てきて、頭をぶん殴られたかと思ったよ。
とにかく、そういう怒りの感情とダークなリフを掛け合わせると、INTEGRITYやRINGWORMといったバンドへの扉が開くわけ。それこそが僕の好きなハードコアのスタイル、つまりダーク・ハードコアのレシピ、っていうか。ま、人によっていろんな呼び名があるだろうけどね。



アメリカ合衆国に移住した理由っていうのは何なんですか?また、一個人としてだけではなく一ミュージシャンとして、この移住はあなたをどんな風に変えましたか?

もともと、2001年ごろにCOMIN CORRECTとのツアーの埋め合わせのためにここに来たんだ。故郷でやってた昔のバンド(DAY OF MOURNING)が全米ツアーの一週間前に解散しちゃって、とにかくそれをなんとかするための別の方法を探さないといけなくなって。その時、完璧なタイミングでRick Ta Lifeがメールをくれたんだ。結局そこで、後にSLUMLORDSやPULLING TEETHを始めることになるメンバーに会って、全米はもとい、ヨーロッパ中を旅することになったっていう。楽しかったよ。



どうやってSLUMLORDSを始めることになったのですか?また、そのプロジェクトについて今はどう感じていますか?

SLUMLORDSは、MURPHY'S LAWやNRSVみたいなみんなが知ってる有名どころ以外に「楽しさを追求したNYHC」をやってるバンドが当時なかったから始めたんだ。SLUMLORDSとして経験したことは、ライブから音源の制作まで、どれもパーフェクトだった。もう二度と経験できないことばかりだと思うんだけどね。 数年前に何回かライブを行ったけど、なんか違った。あの時あのタイミングで、ってことだったんだろうなあ。



いつ頃新しいバンドを始めようと気持ちが移ってきたんですか?

SLUMLORDSでやってたことは、どれも自分の引 き出しにないものばっかりだったから、曲作りは楽しかったんだけど、でもどこか心の奥で、DAY OF MOURNINGとして遣り残してきたことを続けたい、っていう気持ちがあったんだ。Perlinの奥さんが息子を妊娠してる間、しばらくバンドとしての活動を休んで時間が空く、ってことがわかって、そのときにPULLING TEETHを始めるために本格的に動き始めたんだ。



PULLING TEETHの結成の経緯を教えてください。

僕は、INTEGRITYやRINGWORMといったクリーヴランド出身のバンドと、LEFT FOR DEADやHAYMAKERといったカリフォルニアのハミルトンのバンドを掛け合わせて2で割ったような、そんな音の影響がわかるバンドをやりたかったんだ。それが最初のコンセプトで、それからどんどん進化していった。ボルティモア中の、才能があって気になった、ホントにいろんな奴らに声をかけた。で、実際にライブをして、ツアーに行って。当初はたくさんツアーをしてたけど、最初の音源から最後の音源まで、5人中4人は同じメンバーだよ。



ミュージシャンとして、PULLING TEETHは音楽性においてどんな進化を行ってきたと感じていますか?

とにかく、追求してきた、としか。どの音源も、当初描いていたものからは外れているけど、肝心なところは同じく残っていると思う。どれもしっかり繋がっているという。



あなた方は最近「Funerary」(葬式)と名付けられたフルアルバムをリリースしましたが、このアルバムの制作の背景にはどんなことがありましたか?

曲の多くは Paranoid Delusions / Paradise Illusions のころに書かれたんだけど、その頃はバンドがうまく機能していなくて、結局6曲しかその時は完成させることができなかったんだ。残りの曲を肉付けしてヤバく仕上げるために、さらに数年かかってしまったっていう。その時のモチベーションの多くは、Mike(*)の父親と僕の父親の逝去によるところが大きいな。

(*)Mike Riley、PULLING TEETHのボーカル。



あなたは最近父親になりましたが、特にツアーという点では、どんな意識の変化が生まれましたか?

これからまたツアーをするか、って言ったら、たぶん無いだろうと思う。今の自分にとって、妻と時間を過ごすことと娘と遊ぶこと、このふたつが生活の中心になってるからね。


今後3年間、PULLING TEETHとしての予定は?

冬眠。ちょっとの期間だけかもしれないし、もしかしたら永遠かもしれない。



あなたはグラインドコアバンドであるHATEWAVESでもギターを弾いていますが、そのプロジェクトはどのようにして始まったのですか?

その最初のきっかけは、PULLING TEETHでアイスランドに行ったときに思いついたんだ。そこで、結構強い波の上で、もがいてるアヒルを見て、そのときKuhn(*1)に向かって「波 (Waves)にムカついてる(Hate)んだろうな」って言ったんだ。その瞬間、HATEWAVESが生まれた。で、最初のインスピレーションはアヒルから受けたんだけど、すぐにインスピレーションの発信源はTheXBeast、通称Alex Henderson (PULLING TEETHのドラマー)になって。まあ、なんていうのかな、あいつは人生の展望について、ちょっと変わった見方をしてるっていうのかな、だから。結局、全曲基本になっているのは何かにつけて彼の口から出てきたことだからね。HATEWAVESは、僕のほかに、Kuhn、Dougie(元 SLUMLORDS)、あとTRIACからKEVINとJAKEがメンバー。去年'Taste The Beast'ってタイトルの7インチを出して、今年の夏にA389とRSR(*2)から5インチを出す予定だよ。

(*1)Chris Kuhn、PULLING TEETHのベース
(*2)たぶんドイツの速いバンドを多く出してるRegurgitated Semen Recordsのこと。



他に活動してるプロジェクトはありますか?

SKIN LIKE IRONのAlexと僕で、VIRGIN WITCH(*1)の新しいレコードを作ろうか、って話を結構してる。最初の7インチも最高だったし、なんとか実現させたいんだけど、みんな年をとるに従って忙しくなってきて。だから、できるかわからないんだよね。それから、僕の妻は以前、Gnarly Rueage(*2)ってバンドのボーカルをしてて、PULLING TEETHの新しいアルバムの中の'Funerary'って曲でも、その第2パートで歌ってる。彼女の声はかなりヤバいよ、病んでるって感じかなあ。それと、娘がもうちょっと大きくなったら、一緒に音楽をしたいなあ、なんて思ってる。PULLING TEETHは音源はもっと作るかもしれないけど、ライブ自体は減るだろうなあ。ま、その時が来ればわかる、って感じかなあ。

(*1)ココで音源が聴けます。
(*2)ココで音源が聴けます。



では次に、あなたのもう一つの活動である、A389についてお聞きします。その活動はどのようにして始まったのですか?また、これまでと違ってデスクにいる、っていうのはどんな気分ですか?

あー実は、その机、っていうのがないんだよね。よく床で、箱に囲まれて作業してる。A389は8年前に始まって、ただ続けてきて、年々その勢いが増して来た、って感じかなあ。



2011年以降のレーベルとしての計画は何ですか?

ダサくないレコードをリリースし続けることかな。



あの、この件について軽くお尋ねします。レーベルの運営者としては、音源の共有、っていうのはどのように考えていますか?

良いところもあれば、悪いところもあると思う。僕は子どもだった頃テープトレードをしてたんだけど、それは凄くいいものだった。これを通してたくさんの友だちができたし、たくさんのバンドを発見できたからね。でも、最近はブログとファイル共有だからね…。これは、今の時代の象徴なのかもしれない。テクノロジーは、なんの個人的な関係を持つことなしに、なんでも簡単に入手できるようにした、っていう。僕は、みんながこんなにたくさんの音楽を見つけられること自体については気にしてない。聴きたい、っていう人がいることについては、僕はうれしい。

でも、本当に嫌なのは後者の方[ファイル共有]だね。ネット上では権利意識についていろいろ掲げられてるけど、彼らはレコードを作って世に出す、っていうすべてのプロセスについてリスペクトが欠けていて、それはただただ恥ずべきことだと思う。もし、持っていったまま何も返さない、っていうんだったら、結局そこには何もなくなってしまう。このことは覚えておいてほしい。



では次に、ハードコアのリスナー/ファンとしてお聞きします。現在のハードコアの状況についてどのように感じていますか?また、現在株を上げているのはどんなバンドですか?

えーとね、A389の全バンドは別としてだよ、あと僕が聴いて育ってきたバンドも別として、今現在、物凄い衝撃を受ける、っていうバンドはほとんどいないんだけど、NAILS(*1)はすごいね。あとDCのILSA(*2)も本当に好きだよ。もちろんMAGRUDERGRIND(*3)もね。でもあれだな、Yo Gabba Gabba! (*4)を家の中で24時間、一週間ぶっ続けで聴いてると、他にはもう何も聴かなくてもいいやって気になっちゃうよね。

(*1)NAILSはココで音源が聴けます
(*2)ILSAはココで音源が聴けます
(*3)MAGRUDERGRINDはココで音源が聴けます
(*4)Yo Gabba Gabba!はアメリカの子ども番組。こういうのとか、こういうのです。僕(訳者)は好きです(笑)



年長者の意見として、あなたが最初にこのシーンに来たときから変わってきたことについて、どのように感じていますか?また、現在のハードコアシーンについて、どんな問題があると感じていますか?

うーん、ライブ自体してないから、本当のところそんなに行かないし、最近はそれに割くことのできる時間もないんだ。これまでは自分の仕事もしながら、家族で遊びに出かけて、それでA389の方の運営もできて、それにライブに行って時間をつぶして、っていう状況だったんだけど。問題っていうか…僕としては、時間を使って、シーンを保っていくために自分ができることを考えるようにしてるけど。何年もブッキングをして、バンドでツアーして、レコードを出して、ってただ僕たちの先人や、さらにその前の人たちがしてきたみたいなことをしてきた。で、今はもう、次の世代がやりたいことをやる番じゃないかな。



最後に、今回このインタビューに答えていただいたことについて、改めてお礼を言いたいと思います。もし最後になにかコメントや心の叫びがあれば、気にせず教えてください。

いえいえこちらこそどうも。今年はまた大量のレコードがA389から出ます。次はSEVEN SISTERS OF SLEEP、HATEWAVES、ROT IN HELL等々…。夜露死苦!


---SPECIAL THANKS; Dom from A389, WORDS OF EVIL
写真もあるので、ぜひ、原文もチェックしてみてくださーい!